小児の熱中症対策
<小児の熱中症対策>
熱中症とは高温多湿の環境下で環境に順応することができずに起こる状態の総称をいい、実際にはさまざまな状態が組み合わさって起こります。
具体的には、体温上昇にともない発汗がすすみ、それらにより、脱水、血中ナトリウムの低下や循環不全(各組織での血液の流れが悪化)が生じ、各臓器の機能不全が生じます。
症状として、めまい、筋肉痛、筋肉硬直が生じる場合は環境調整や飲水、冷却などの対応策が必要になります。さらに頭痛、嘔吐虚脱感、判断力の低下が生じた場合は病院受診が必要になります。意識障害やけいれんが生じる場合は多臓器に影響がある可能性があり入院治療が必要になる場合があります。
順応できない状況としては、環境、本人の体質・状態、本人の行動様式の三要素のリスクを考慮する必要があります。環境には高温(急な気温上昇)、多湿、空気の流れが悪いなどが挙げられます。本人の体質・状態は乳幼児、高齢者、暑い環境に慣れていない、日常生活での運動不足、疲労、睡眠不足、肥満、心疾患患者、精神疾患患者などが挙げられます。本人の行動様式としては運動、長時間の屋外活動、水分・塩分摂取不足などがあげられます。運動においては屋外のみならず、湿度がこもりがちで脱水に気づかれにくい屋内での運動にも注意が必要です(野球、サッカー、陸上競技、バスケットボール、剣道、バドミントンなど)。家族で車を利用して外出という機会も多いと思いますが、車の中で待機していた乳幼児の熱中症は死亡に至るケースも少なくありません。エンジンを止めエアコンなし窓開けなしだと5分で車内は35℃を超え、日陰に駐車してすこし窓をあける程度ではほぼ同様な状況になるようですので、乳幼児のみで車内に置いたままにしないことが唯一の対策といえます。
熱中症対策として、まずは環境に留意することが重要です。外気温24℃以上から運動などに注意が必要で、外気温31℃以上から激しい運動は中止するなど厳重な警戒が必要になります。最近では、熱中症のリスクの指標として「暑さ指数(WBGT)」が推奨されています。暑さ指数は外気温、湿度、輻射熱を考慮した指数で、より精度の高い指標となります。環境省は熱中症対策として暑さ指数をホームページ上で公開していますので、参考にすると良いでしょう。旅行や家族での外出、トレッキングやキャンプなどで参考になると思います。暑さ指数21℃から注意が必要で25℃から警戒、28℃以上から厳重警戒が必要です。リスクは環境だけではありません。その他のリスクとして当人の状態・行動もあげられます。具体的には適宜、休息・水分塩分補給することが推奨されています。たとえば激しい運動中は30分おきの休息補給が推奨されています。子供たちは自分の状況を説明し行動に移すことが難しいため、周囲の大人が定期的にチェックすることが必要です。その観点から小児においては運動の激しさに限らず30分おきに休息補給を基本の目安と考え、状況に応じて20分間隔での休息補給を考慮しましょう。
新型コロナウイルス感染症は2類から5類に変更となりインフルエンザと同様の対応で良いことになりました。マスクの装着は任意となり、学校生活におけるガイドラインでは、運動中において周囲に人がいない場合はマスクをはずしてよいとの指針が出されています。マスクをつけていると口の中が乾きにくくなり、自分の状態に気づきにくくなるため、意識的な定期休息補給が必要です。ソシアルディスタンスが確保されている状況や家族などで普段から密な接触をしている関係であれば、マスクによる感染予防対策より熱中症対策の方が重視されます。2歳以下ではマスクを含めすぐに取ってしまう可能性があり、マスク対策はできる範囲でかまいません。
<熱中症予防のための行動指針>
スポーツ大会への参加やアウトドアに出かける際などは、当日現地の暑さ指数および下記に示した行動指針を確認しておくことも予防につながると思います。
暑さ指数は環境省ホームページを参照してください
暑さ指数 WBGT (℃) |
外気温 乾球温度 (℃) |
危険度 |
生活活動の 危険度 |
日常生活の注意事項 |
運動指針 |
31 |
35 |
危険 |
すべての生活活動で危険性あり |
外出はなるべく避け、 涼しい室内に移動する |
運動は原則中止
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28 |
31 |
厳重警戒 |
外出時は炎天下を避け、 室内では室温の上昇に注意する |
激しい運動は中止
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25 |
28 |
警戒 |
中等以上の生活活動で危険性あり |
運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる |
積極的に休息する
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21 |
24 |
注意 |
強い生活強度で危険性あり |
一般に危険性は少ないが、激しい運動や激しい作業では発生する危険性がある |
積極的に水分補給
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ほぼ安全 |
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適宜水分補給
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2020/07/05
2023/07/03 改変
サウスウッドこどもクリニック
院長 栗屋敬之