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小児にとってのお薬の意義、注意点

小児における薬物治療の意義、注意点

  ~感染症における薬物治療を中心に、抗生剤の適正使用を含めて~

 

治療には薬物治療、外科治療、生活環境の整備などがあり、時には複合的に行うことでより高い治療効果が望めます。診断や治療が必ずしも有効でない場合や治療効果を高めるために、予防対策も重要です。予防には手洗い、マスク装着(咳エチケット)、生活環境の整備、ワクチン接種などがあります。これらの治療・予防はこれまでは経験則が中心でしたが、近年では客観的なエビデンス(証拠・根拠)が重視されています。エビデンスの積み重ねがより信頼性の高いエビデンスとなり、治療の選択に重要な役割を果たします。

これらをふまえ、小児における薬物治療(特に感染症における薬物治療を中心に)の意義と注意点をお伝えします。

 

感染症は微生物が私たちの体内に侵入し、私たちの体の機能を阻害するなどして病気が発症するものを指します。侵入する経路として、鼻や口から侵入する場合、口から侵入する場合、皮膚から侵入する場合があります。微生物にはウイルス、細菌、真菌(かび)などがあり、それらの毒性の程度と、かかった人の抵抗力・免疫力の程度によって、症状の経過や治療の有効性に差が生じます。

感染症に対して大昔では有効な治療はなく、個人の抵抗力・免疫力がよりどころであり免疫力を高めるような自然の食材や薬草が使用されましたが、それらの治療は個人の経験則に基づき、確立された治療とはいえない状況でした。現代においても食生活や生活習慣などで自分自身の免疫力を高めておくことは重要ですが、医学の進歩により微生物そのものについての解明が進み、有効な薬物治療が確立されつつあります。が、まだまだ発展途上にあり、その有効性や副作用を十分に考慮しながら治療を進めていく必要があります。そのためには薬の特性だけでなく、治療する児の年齢や体質、生活環境などを総合的に判断していく必要があります。

 

風邪、感冒(急性気道感染症)

微生物が空気の流れにのって体内に侵入し発症する場合、空気感染といいます。微生物は口や鼻の内壁に到達するとそこで増殖し、そこからさらに体内に侵入し、血液にのって全身に侵入します。それに対する防御手段として鼻腔や口腔壁の粘膜において病原体の侵入や増殖を防ぐ機能がありますが、それを抑えきれない場合は、それを排除する防御機構が発動し、咳嗽鼻汁や発熱などの症状が出現します。防御システムが十分に機能しない場は症状が強くなり経過が長くなる可能性があります。たとえば鼻閉により口呼吸が多い状態だと口腔内粘膜が乾燥しその機能が損なわれ、増殖侵入を許してしまいます。咳嗽により、十分な睡眠や水分・食事がとれず、結果として抵抗力が低下してしまう可能性があります。 

治療としての薬物には鎮咳去痰剤や鼻汁や鼻閉に対する薬剤があります。これらは症状を緩和するのみならず、鼻や口の粘膜における防御機構を維持する効果があります。また、鼻閉による口呼吸により口腔内の乾燥や直接に病原体を吸い込むことを防ぐことに役立ちます。抗菌薬(抗生剤)は病原体のうち細菌に対して効果を発揮しますが、感冒などの呼吸器感染症においてはその原因のほとんどはウイルスが原因のため抗菌薬が無効であることが多いです。ですので、感染早期に抗菌薬を使用するケースはほとんどありません。周囲の感染情報や診察所見などにより原因微生物が細菌感染症と診断できる際には早期に抗菌薬を使用する場合があります。

感冒症状が続いている場合に気をつけておかなければならないことがあります。口鼻の空間は耳管を通じて耳に連絡していることやのどの奥や気管支や肺にまで交通しているために中耳炎や肺炎を合併してしまうことが少なくありません。これらの合併症を来さないために内服薬は重要な役割を果たします。

一方で、年齢により薬のデメリットを考慮する必要があり、新生児・幼少児の場合は内服薬は限定的にしか使用できない場合があります。

 

気管支炎・喘息性気管支炎・肺炎

より体の深い場所である気管支や肺(肺胞)までのダメージにより気管支炎や肺炎になってしまうことがあります。このような状況になる条件としては、まず原因病原体の種類(インフルエンザやRSウイルスなど)、私たちやこどもたちの年齢(特に免疫力が不十分な乳幼児)、過去の気管支炎・肺炎罹患、アレルギー体質、生活環境などが挙げられます。それらを考慮しながら有効な薬剤を選択します。

 

気管支喘息

発作性に生じる気道狭窄によって喘鳴や呼吸困難を繰り返す病気です。原因としては気道における慢性的なアレルギー性炎症が本態であり、これに感染や花粉や大気中のアレルゲンなどが悪化因子として誘発し、気道における粘膜や気道平滑筋に作用し、症状を発症します。

治療は、発作に対する治療と長期的に症状をコントロールする治療の二本だてで治療します。

発作に対する治療は発作の程度、頻度などで治療内容が選択されます。発作時には気道が狭窄しているため気管支拡張剤を使用することがほとんどです。発作の誘因として感染症が多いため、その際の治療を合わせながら治療薬の選択を行います。

 

アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎

風邪や感冒では侵入門戸が鼻であるため、鼻症状が出現することが多いです。一方で、ハウスダストや花粉などによる鼻粘膜のアレルギーによる斑症状が出現することも多いです。1歳前後の幼少期では前者が多く、5歳前後では後者の可能性を考慮する必要があります。実際には両方がかかわっているケースも多いです。

治療としては、生活環境の整備(感染症の流行時期や周囲の感染者からの隔離対策など)、薬物療法(内服薬、点鼻薬、免疫舌下療法)、鼻腔洗浄などがあります。

鼻と耳はつながっていて、鼻腔に入り込んだ病原体は、鼻腔と中耳をつなぐ耳管を介して中耳炎や副鼻腔炎に波及することがあります。

乳幼児は副鼻腔が発達していないため副鼻腔炎にはなりにくいですが、耳管が短いため中耳炎を合併しやすいことがわかっています。けれども、一般的には予防的に抗菌薬を使用することは推奨されていません。抗菌薬を使用することについては、10日間以上咳嗽鼻汁症状が持続している場合、39℃以上の発熱が少なくとも3日以上続く場合、感冒罹患1週間後に再発熱、咳嗽鼻汁を認めるもの場合などで検討することが推奨されています。

 

胃腸炎(おなかのかぜ)

胃腸炎は嘔吐、下痢、腹痛など、消化器系症状をきたす感染症です。その原因にはノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどのウイルスによるものや病原性大腸菌やサルモネラ、キャンピロバクターなど細菌によるものがあります。頻度としてはウイルス性腸炎が圧倒的に多いです。ウイルス性腸炎は脱水や摂食障害を注意してケアすれば自然に回復することが多く、内服薬は早期回復を目指して処方することが多いです。具体的には嘔気嘔吐には制吐剤を使用し、下痢には整腸剤を内服し、消化の良い食事をとることが重要です。細菌性腸炎は特に小児において重篤な合併症をきたすことあり、注意が必要です。腹痛の強さや便の性状、血便の有無などで判断しますが、細菌性腸炎だからといっても、抗菌薬の治療が必ずしも有効でなく保菌状態を長引かせる可能性もあり、入院治療で総合的な治療が必要な場合も少なくありません。

 

皮膚感染症

水痘(みずぼうそう)、伝染性膿痂疹(とびひ)

皮膚の感染症には様々なものがありますが、小児期においては水ぼうそう、水いぼ、とびひがよく見られます。水ぼうそう(水痘)は水痘ウイルスが原因であり有効な抗ウイルス剤が開発されています。水いぼ(伝染性軟属腫)は確立された薬剤はありませんが漢方薬が使われる場合があります。とびひ(伝染性膿痂疹)はブドウ球菌や溶連菌などの細菌が原因ですが、最近では耐性菌が増えているためこれまでの抗菌薬では治療が進まないことも多くなっています。そのため、抗菌治療に頼らずに、石けんなどで皮膚表面の菌などを洗い流すなどのスキンケアも重要となってきます。また、乾燥肌やアトピー性皮膚炎があるほうが悪化しやすいため普段から保湿剤などによるスキンケアをおこなっておくことが予防的にも重要です。

 

乳児湿疹、アトピー性皮膚炎

乳児期に一過性に生じる乳児湿疹や乳幼児期に湿疹が繰り返しもしくは持続的に生じるアトピー性皮膚炎には、スキンケアとともに外用薬による治療が多くなされます。外用薬としては保湿剤、非ステロイド系外用薬、ステロイド系外用薬、免疫抑制外用薬、サイトカイン阻害外用薬などがあります。実際はスキンケアのみで改善する比較的軽症の場合や強いステロイド外用薬、免疫抑制外用薬などが必要な場合など、その経過はかなり個人差があります。また、食物アレルギー、気管支喘息などと関連性がある場合があります。いずれも、慢性的な経過をたどることが多く、感染や環境の変化などで悪化することも多いため、どの薬剤をどれくらいの期間使用するかなど主治医とともによく観察していくことが重要です。コントロール良好の場合は、外用薬を減量しても皮膚の状態が維持され、最終的に薬をすべて中止することが可能になります。コントロール不良の場合は皮膚掻痒が強く睡眠障害などを引き起こすことがあり、成人期になっても治療の継続が必要な場合があります。

 

サウスウッドこどもクリニック 院長

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